簡単に考えていた下駄の取り扱いがこんなに難しいのかびっくりしてしばらく諦めることにした。2年ほど経ったある日、酒席で一緒になった男性が大分県日田市の出身で、日田の物産を紹介するために福岡の百貨店で日田展を開催する話を聞いた、私の話を聞いて一度、日田に来ないかと誘われ、日田を訪れた、日田は林業で有名な都市で、特に日田杉の生産が盛んで、その杉で下駄を作り、その歴史は長い、その縁で日田下駄を扱うことにした。

2年ほど日田下駄を扱ったが、私が扱いたかったのは杉下駄ではなく、桐下駄ではないかと思い、桐下駄を探すことにした、桐下駄台はネット販売をしている会社を探して見ることにした、桐下駄の産地は山の中にあると思っていたが意外にも生産現場は別の所にあった。考えてみれば桐は山の中ではなく、昔は娘が生まれたら桐の木を植え、成人して結婚する時に、その桐の木で箪笥を作っていたようで、成長が早く、どこでも見ることができる木である。主な生産現場は静岡県が一番多いと聞いたが、生産者の中にネット販売をするような会社を探すことが出来なかった。

ネット販売の会社を片っ端から電話をかけた、その中に徳島県のお店に出会い、桐下駄が日本製かを確認して、取りあえず5足送ってもらうことにした、届いた桐下駄は立派な白木で二枚歯のクラシックな下駄で芳町(よしちょう)とゆう形だそうです。鼻緒をネットで販売している会社は無く、日田下駄を注文するときに挿(す)げてもらっていた鼻緒を10足分、別に注文した。

それで下駄台と鼻緒が揃ったが、下駄に鼻緒を挿げる作業がある、ネットで下駄の挿げ方を調べてやってみたが、上手く出来ない、家内用に一足挿げたが履いて間も無く鼻緒が下駄台からすっぽ抜けた。下駄の鼻緒が抜けると危険で、家内から怒られた。

それから、呉服組合の売り出しに毎年、草履の販売に東京から来てもらっている方に気がつき、その方に下駄の挿げ方を習うことにした。とても親切に教えていただき、私の挿げた下駄に太鼓判を押していただきました。

店に置いている5足の下駄と10足分の鼻緒を店に出してお客様を待ちましたが、家内や店の従業員が私を信頼しておらず、お客様に勧めることがなかった。そして6月のある日、ついに最初のお客様が私のサイズに合わせて鼻緒をすげてちょうだいと言われ、嬉しいやら緊張するやらで、普通20分もあれば挿げる作業を50分かけて完成、恐る恐る試着してもらい、とても喜ばれたのでほっとして下駄をお渡しして代金2940円(当時消費税5%)を戴いた。もっと利益を乗せても良かったのですが、素人に毛の生えた程度の下駄職人の技ではその程度だろうと思った。